井上尚弥 vs アントニオ・ニエベス、観戦記|ボクシング、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ

2017年9月10日(日本時間)、ボクシング、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが、米カリフォルニア州カーソンにて開催されました。

王者の井上尚弥に、世界ランキング7位である、アメリカのアントニオ・ニエベスが挑みます。

ボクシングの本場と言われる、アメリカでのデビュー戦となる、井上選手。
世界的なスーパースターとのビッグマッチへと漕ぎつけるためには、この一戦での印象的な勝利が必要不可欠です。

それでは以下に、この試合についての感想を述べてみたいと思います。

なお、両者のデータについては、次の通りです。

井上尚弥 (王者)

身長:164cm、リーチ:171cm、年齢:24歳、出身地:日本

アントニオ・ニエベス (7位)

身長:166cm、リーチ:174cm、年齢:30歳、出身地:アメリカ

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井上尚弥 vs アントニオ・ニエベス、観戦記

第1ラウンド。
井上選手のスピードを警戒してか、ニエベスはガードを固め、相手の出方を窺う構えを見せます。
そんな挑戦者に対して、井上選手は積極的にジャブを突き、距離感を確認する作業から入ります。

その作業を早々に終えると、井上選手は徐々にギアを上げていきます。
動きがダイナミックになり、ジャブは鋭さを増し、コンビネーションの仕掛けが増えていきます。
ハンドスピードに優れ、フットワークも俊敏な井上選手を相手に、ニエベスは後手に回ったままラウンドを終えます。

第2ラウンド以降も、ニエベスは突破口を見い出すことができません。

前へ出てパンチを繰り出しても、あっさりとパリーやスウェーでいなされ、逆に打ち終わりを狙われてしまいます。
インファイトを仕掛けようにも、シャープなジャブとパワーパンチで突き放されて、井上選手の懐に侵入することができません。
両者のあいだには、完全な実力差・・・というより、残酷なまでの才能の差があるように感じます。

上下に打ち分け、ニエベスにダメージを蓄積させていく井上選手。
特に、そのボディ打ちの技巧には、目を見張るものがあります。

ニエベスは、がっちりとガードを固めて、脇から肘を離しません。
しかし井上選手は、ほんのわずかなブロックの隙間に、左ボディをピンポイントでねじ込んでいきます。

左ボディ自体の精度もさることながら、そこに繋げるまでの動きに、センスを感じさせます。

ワンツーでガードを固めさせてからの左ボディ。
左フックを浴びせて、相手の右ガードを脇に寄せてからの、鳩尾を狙った左ボディアッパー。

セオリーとも言えるコンビネーションではありますが、スピード、パワー、精度、角度・・・すべての要素がハイレベルです。

そして、第5ラウンド。
防戦一方でロープに詰まったニエベスに、ガードの隙間を射抜くような井上選手の左ボディアッパーが炸裂します。
絶妙な角度で決まったその一撃に、ニエベスは堪らず膝をつきます。

なんとか立ちあがったものの、もはや勝負の行方は誰の目にも明らか。
第6ラウンドが終了した時点で、セコンドが棄権を申し入れ、井上選手のTKO勝利が宣告されました。

あとがき&考察

井上尚弥選手、素晴らしい米国デビュー戦となりました。

世界ランキング7位の選手に、圧倒的な実力差を見せつけてのTKO勝利。
世界的なビッグマッチに参戦する資格があることを、存分にアピールしたと言えるでしょう。

人並み外れた、規格外の瞬発力と反射神経。
そんな天賦の才を持って生まれた者が、弛まぬ努力で鍛錬を続けた時、このような怪物が誕生します。

いったい、この青年はどこまで飛翔していくのか。
若き王者の才能の底は、いまだ見えません。

モンスター、井上尚弥の懸念材料について考える

覇道を突き進むが如しの井上選手。
しかし、懸念材料が皆無というわけではありません。

以前、井上選手のディフェンス面での懸念について、言及したことがありました。

関連記事:
井上尚弥 vs リカルド・ロドリゲス、観戦記

以下では、その点について、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

井上選手のディフェンスは、パリースウェーが中心です。
反射神経を活かしたディフェンス戦略であり、他の一般的なボクサーが容易に真似のできるものではありません。
人並み外れた才能を持つ、井上選手だからこそ、前述の技術を「ディフェンスの軸」として採用することができます。

ここで問題となるのが・・・
パリーやスウェーを多用する選手は、「システマチックなディフェンス」を不得手とする傾向にある──という点です。

才能依存の技術は、その体系を確立することが困難です。
それゆえに、練習も実践も、選手個人の感覚任せになりがちです。

そうした才能依存・感覚依存の技術は、ふとした時に「綻び」が生じます。
相手が強豪であればあるほど、その綻びが生じるリスクは大きなものとなります。
これこそが、井上選手が抱える、数少ない懸念材料の一つと言えるでしょう。

ここで思い起こすのが、希代の天才ボクサー、フロイド・メイウェザー・ジュニアです。

彼のディフェンスは、自身の反射神経に大きく依存したものですが、その技術は体系立っており、非常にシステマチックです。
天賦の才が、一つのシステムとして理想的に組み上げられた典型例と言えます。

このあたりが、井上選手の「完成形」の、最後の1ピースになるかもしれません。

24歳の井上選手。
ボクサーとしての円熟期は、まだまだ先のはずです。
数年後、日本が誇る”モンスター”は、どのような進化を遂げているでしょうか。

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